オフィス内装と知的財産権

1.オフィス内装とデザイン性

池辺法律事務所は開業に向けて、オフィス作りをしておりました。

オフィスデザインには、単なる「効率的に仕事をする場をつくる」以上の意味があります。私も、実際にオフィスを作ってみて、このことが理解できました。

例えば、当事務所のオフィスは、「専門的でありながらもアクセスしやすい弁護士」という、私の姿勢を反映したものになっています。 デザイナーさんは、私のその考えをヒアリングし、その結果、半円などの曲線を大胆に取り入れ、優雅でありながらも、どこか柔らかな印象の空間を作ってくれました。

これらの狙いや個性が反映されたデザインは、法律的には保護されるのでしょうか?具体的には、無断でデザインを模倣しようとする行為を、阻止することができるのでしょうか?

模倣の防止ができるのであれば、デザインは1つの知的財産として保護されるといえます。すると、デザイナーは凝った仕事ができることになります。逆に言えば、凝ったデザインでも法的に保護されないなら、無味乾燥ですが思いつきやすく、無難なデザインを提出することがコストパフォーマンスの良い仕事、になってしまいます。

以下のとおり、「内装と知的財産権」についての知識をお届けします。

2.知的財産権と内装デザイン

「知的財産権」としては、特許や著作権が広く知られています。 内装デザインの分野でも、これらの権利が適用される場合がありますが、特に注目すべきは、近年、内装が新たに、意匠権による保護対象とされたことです。

意匠権は、工業デザインを保護するための知的財産権であり、その適用範囲が拡大しています。 2020年4月1日から施行された改正意匠法では、意匠の定義が拡張され、以前は保護の対象外だった建築物が新たに加わりました(意匠法第2条1項)。同時に、内装についても、意匠登録を受けることが可能になりました(意匠法8条の2)。

内装の意匠権に関しては、「店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾」が対象とされます。重要なのは、内装を構成する設備、装飾とした要素が、「内装全体として統一的な美感を起こさせるときは」(意匠法8条の2)、一つの意匠として登録が可能であるという点です。

つまり、内装が意匠として登録を受けるためには、「統一的な美感を創出すること」が必須条件です。 例えば、構成物に共通の形状や処理が施されているケースや、全体として一つの形状や模様を示す内装がこれに該当します。 単に煩雑でまとまりのないデザインはこの要件を満たさないため、除外されます。この点は、複数の構成物品の「配置」を含めた意匠全体の美感が、保護対象となるという観点からも重要です。

つまり内装は、部分ではなく全体デザインとして成り立つものである、ということです。そのような統一感を備えるレベルのものであれば、意匠として保護されうる、という法律になっています。

3.オフィスデザインと創作性

以上のように、内装が意匠登録の対象となっており、登録された意匠の業務上実施は、権利者に独占されます。つまり、登録されたものと同じデザインを業務上、用いることはできません。

これらの基本知識は、デザインをする企業と、デザインをしてもらう企業の、双方にとって重要です。例えば権利処理や権利の帰属について、契約上の手当を検討する必要があります。

内装作りは作りたいビジネスの反映であり、デザイナーさんとの共同作業になります。

例えば、「弁護士と秘書スタッフは、先生とアシスタントさん、といった極端な上下関係でありたくない。ともに横並びで成長していきたい。」、という思いから、フラットに横一枚で繋がったデスクが生まれました。

以下は、設計デザイン企業さんによる、私のインタビューの記事です。

私の作りたい法律事務所の形についてのインタビューやヒアリングを通して、当事務所のオフィスが出来上がりました。是非ご覧ください。

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