ガバナンスとコンプライアンスの真の価値

皆様は「コンプライアンス」という言葉を聞くと、どういうイメージを持ちますか?

多くの人は「やらなきゃいけないこと」という義務的なマイナスイメージを持つかもしれません。
しかし、実際には、コンプライアンスは「やった方がいいこと」とプラスに捉えることであり、組織にとって大きなメリットがあります。

さらに、コンプライアンスを支えるガバナンスが効果的に機能していることで、組織は持続的な成長と発展を遂げることができます。
本コラムでは、ガバナンスとコンプライアンスの重要性と、それらを効果的に機能させる方法について解説します。

1.コンプライアンス意識が組織の成長を促進する

まず、コンプライアンスがしっかりしている組織は、売上も上がりやすいという点に注目しましょう。

コンプライアンスが徹底されている組織は、顧客や取引先からの信頼が高まり、長期的に見て売上が向上する傾向があります。
特に、誠実な対応や透明性の高い企業は、消費者からの共感を得やすく、結果的に販売戦略が成功しやすくなります。

コンプライアンスを「やった方がいいこと」と捉えることで、組織の成長を加速させることができるのです。

2.不正を防ぐためのガバナンスの役割

ガバナンスとは、組織の意思決定の仕組みやプロセスを管理し、組織全体が適切に機能するようにすることを指し、コンプライアンスを支える重要な要素です。
組織全体が不正を行わないように仕組みを整えることが、ガバナンスの基本です。

単に「不正をするな」と言うだけではなく、実際に不正が起きないような環境を作ることが重要です。
ここで大切なのは、建前と本音の一致です。

建前では「不正はダメだ」と言いながらも、組織の本音は「売上を上げるためなら多少のごまかしは仕方がない」というような、誤ったメッセージが従業員らに伝わらないようにする必要があります。

これを防ぐためには、組織運営の中で建前を排し、本音で行動する文化を育てることが求められます。

3.誘惑とエスカレーションのリスク

人が不正を犯す契機は、認知神経科学の実験からも明らかです。

人はもともと善良であっても、誘惑に負けることがあります。そして、一度不正を行うと、その行為が次第にエスカレートしていきます。脳の働きによって、最初は罪悪感を抱くものの、不正を繰り返すうちにその感覚が鈍くなってしまうのです。

このようなリスクを避けるためには、不正を誘惑するような状況を取り除き、不正が起こりにくい仕組みを整えることが不可欠です。

4.コンプライアンスによる損失の回避・内部監査と通報制度の導入

コンプライアンスは、組織をリスクから守る役割を果たします。もしコンプライアンスが欠如していれば、不正や法令違反が発覚した際に、監査や警察の介入を受ける可能性が高まります。これにより、組織は大きな損失を被るリスクがあります。

しかし、コンプライアンスに強みがあれば、こうした損失を未然に防ぐことができます。

不正を防ぐための具体的な方法として、内部監査や内部通報制度があります。
これらの制度を導入することで、小さな不正が大きな問題に発展する前に対処することができます。

内部通報制度は、従業員が不正を発見した際に、上司や外部の弁護士などに匿名で報告できる仕組みです。
この制度があることで、不正が隠蔽されることなく、早期に対処できる可能性が高まり、組織全体のリスクを大幅に軽減することができます。

なお、内部通報制度については、別のコラムで解説しております。

公益通報者保護法の重要性と内部通報制度の導入方法【基礎編】

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5.優秀な人材を引き寄せる組織文化

さらに、コンプライアンスがしっかりしている組織は、優秀な人材を採用しやすくなります。
近年、SNSやインターネットの普及により、企業の実態が外部に漏れやすくなっています。求職者は、就活サイトや企業のホームページだけでなく、社員(退職者含む)等による口コミサイトも利用して、あらゆる角度から応募先企業の評判を調査しています。

そのため、コンプライアンスに欠ける企業は、優秀な人材から敬遠される可能性が高く、逆に、誠実で透明性の高い企業は、優秀な人材を引き寄せやすくなります。

6.組織全体で未来を作る取り組み

ガバナンスとコンプライアンスは、単なるルールではなく、組織の未来を作る重要な要素です。
これらがしっかりと機能している組織は、効率が上がり、イノベーションが生まれ、結果として業績も向上します。

また、これらの取り組みが浸透している企業ほど、従業員の満足度が高く、ハラスメント防止にも効果があります。最終的には、これらが組織全体の生産性を向上させ、持続的な成長につながるのです。

7.まとめ

コンプライアンスとガバナンスは、組織を守り、成長させるための不可欠な要素です。
これらを形式的なものに終わらせず、本音で運営し、実際に機能する仕組みを整えることが、健全な組織運営の鍵となります。

コンプライアンスは「やらなければならないこと」ではなく、「やった方がいいこと」。

これを守ることで、組織は売上を向上させ、損失を回避し、優秀な人材を採用することができます
今日からでも、組織でこれらの取り組みを見直し、強化していくことをお勧めします。

次回のコラムでは、認知神経科学的アプローチから、ガバナンスの重要性について解説いたします。

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