団体交渉とは?団体交渉の流れ・進め方と企業側がやってはいけない対応(気をつけるべきポイント)

団体交渉とは、労働組合(合同労組・ユニオンを含む。)と企業が労働条件や雇用に関する問題を話し合い、解決を目指す重要なプロセスです。

初めて団体交渉を経験する企業の担当者にとっては、どのように対応すべきか迷う場面が多いでしょう。
団体交渉では、適切な対応を怠ると労働問題が深刻化し、企業に不利な状況を招くリスクがあります。

今回は、団体交渉の流れ・進め方と、企業側がやってはいけない対応(気を付けるべきポイント)をわかりやすく解説いたします。

団体交渉の流れ・進め方

1.労働組合からの申し入れ
多くの団体交渉は、労働組合から団体交渉申入書が会社に届くことで交渉が始まります。
ここからすでに団体交渉はスタートしていますので、この時点から会社の対応は慎重であるべきです。
2.申入書の内容精査と対応方針の検討
受け取った申入書を精査し、内容を正確に理解することが重要です。
団体交渉の申し入れに応じる必要性を判断し、どのように対応するか検討します。
3.交渉日時・場所の調整
労使双方で交渉の日時や場所を協議し、合意の上で決定します。
労働組合の要求通りに従う必要はなく、企業側も適切な条件で交渉を進めるために、事前の協議は軽視できません。

また、可能な限り、このような調整段階から書面でのやり取りをすることをお勧めします。
4.団体交渉の実施と対応
■実際の団体交渉では、組合側の要求や主張を冷静に聴き、慎重に対応します。

■団体交渉での録音・録画は、後に「言った」「言わない」のトラブルが生じた際の証拠となりますし、感情的な発言や不適切な態度を抑止する効果があります。録音・録画する場合は、事前に組合側に申し入れをすることが多いです。

■団体交渉での交渉経過について、議事録の作成をすることも多いところです。議事録の作成まではしないとしても、少なくとも交渉後の次のアクション、例えば、「●●について会社側で検討をする。」等については、双方で明確に確認をすることが、交渉を上手く進めるために重要です。

団体交渉でやってはいけないこと(気をけるべき5つのポイント)

1.団体交渉の拒否は絶対にしない(誠実交渉義務)

  • 労働組合は憲法や労働組合法で保障されている「団体交渉権」※を持っているため、団体交渉を拒否することはできません。ただし、組合側に暴言や暴力的な行為等、態度に著しく問題がある場合や、不当な要求をされた場合などは、例外的に拒否できます。

    【※団体交渉権とは?】 労働組合が、雇う側と労働条件などを交渉し、文書などで約束を交わすことができる権利のことです。
  • 会社は単に団体交渉に応じればよいわけではなく、「誠実交渉義務」も課せられます。
    そのため、団体交渉の申入れを無視したり、形式的に交渉に応じてもまったく誠意のない対応をしたりすると、「不当労働行為」とみなされる恐れがあります。対面での交渉を避け、書面のみでの回答をすることも不誠実な対応とされるリスクがあります。
  • ただ、ここで勘違いしてはならないのは、「誠実交渉義務」は負っていますが、申入書に記載されている要求に応じる義務は負っていません。そのため、申入れ内容(組合の主張・要求)が正当であるかどうか、しっかり精査してください
    精査の結果、要求が受け入れがたいものであった場合には、根拠資料等に基づいて丁寧に説明できるよう、団体交渉当日までに準備をしてください。

2.団体交渉の開催時間や場所の選定には注意が必要

  • 団体交渉は労働ではありませんので、団体交渉の開催時間について、就業時間中に設定する必要はありません。交渉上、就業時間外に設定することが有利である場合もあります。
  • 場所は「組合事務所や会社」を指定されることが多いですが、貸会議室の利用をお勧めしています。
    企業にとって、貸会議室代、交通費の負担はありますが、会議室の利用時間が決められているため、むやみに交渉時間が延長されることがありませんし、なにより組合側の雰囲気にのまれることを防ぐことができます。
    また、他の従業員への影響を考えると、会社で実施することが好ましくない場合があります。
  • 労働組合がオンラインでの団体交渉に同意すれば、オンラインでの実施が可能です。ただし、団体交渉の原則は対面ですので、オンラインでの実施に固執すると不当労働行為になる可能性がありますので、ご注意ください。

3.交渉中、書面に署名・押印をする場合は注意する

団体交渉中に組合が作成した書面や議事録には、注意した上で、企業側は署名や押印をするべきです。
思わぬ内容が記載されており、署名や押印をすることで、その内容に同意したと見なされ、後に不利な解釈をされる恐れがあります。

4.感情的な対応を控え、冷静に対処する

  • 団体交渉では、組合側から過激な要求や批判を受けることが多々ありますが、感情的に反論したり、敵対的な態度を取ることは禁物です。冷静に相手の主張を聴き、必要であれば専門家の助言を仰ぎながら、論理的に対応することが重要です。
    感情に流されず、粘り強く交渉する姿勢を保ちましょう。
  • 組合側から、すぐに対応(回答)するよう圧力をかけられることもありますが、焦って不誠実な対応をしてしまうと、かえって長引く結果になります。検討が必要なのであれば、即座に回答をする義務はないので、必要に応じて回答期限の延長を組合側に求めることも検討してください。

5.不利益取り扱いや支配介入を避ける

  • 団体交渉を申し入れた組合員やその活動に対して、不利益な処分を行うことは、不当労働行為とされ、違法となります。
  • 組合員に対して組合活動をやめるよう説得することは支配介入とみなされる恐れがあります。

まとめ

団体交渉は、企業と労働組合の対話を通じて労働問題を解決するための重要な場です。
適切な対応を欠かせば、企業にとって大きなリスクとなり得ます。また団体交渉では、議事録等作成される書面の内容に注意し、冷静に粘り強く交渉する姿勢が求められます。企業の立場を守りつつも、法的な枠組みの中で誠実な対応を心がけることが大切です。

また、弁護士のサポートを受けることで、法的リスクを回避し、最適な解決策を見出すことができます。特に、交渉が難航する場合、弁護士の専門的なアドバイスが非常に有効です。
さらに、弁護士が同席することで感情的な対立を避けることができ、交渉がスムーズに進みやすくなります。

会社にとっても労働者にとっても、より良い結果を得るために、適切な対応を取ることが重要です。
団体交渉の申し入れをされた場合は、速やかに顧問弁護士にご連絡ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です